こんにちは。こあべです。
先日、こんなニュースが流れました。
「確定給付型」年金の予定利率 19年ぶり引き下げへ 第一生命 - NHK
第一生命の確定給付企業年金保険が
・日銀のマイナス金利政策が長期化している
・新型コロナの影響で各国の中央銀行が金融緩和に踏み切って金利を引き下げた
ことを背景に、来年10月から運用する際の予定利率を1.25%から0.25%に引き下げる、という内容。
この内容について「これってなんなん?」と質問をいただきました!
自分の年金が減るんじゃないかという一抹の不安を抱いてしまうニュースです…
今回は、
・そもそも確定給付企業年金の予定利率って何?
・予定利率の引き下げは、自分の将来にどう関わるの?
について掘り下げていきます。
今日のメニュー!
確定給付型年金の予定利率とは?
正式名称は「確定給付企業年金保険(DB: Defined Benefit plan)」。
将来的な給付額があらかじめ決まっており、給付額を賄う掛け金を予定利率や平均余命などを用いた計算で算出、企業が拠出して委託された生命保険会社等が運用します。
国民年金や厚生年金に上乗せして給付される私的年金のひとつです。
よく確定拠出年金(企業型DC: Defined Contribution Plan)という言葉を耳にしますが、今回のニュースとは無関係。
DB/DCの概要と特徴の比較表を拝借します。
確定給付型年金は、
・給付額が確定している
・企業(雇用元)が運用する
・年金資産の把握ができない
・転職時、「給付型」→「給付型」の繰り上げは不可能
という特徴を持つものなんですね。
今回の引き下げで影響を受ける人は誰?
これを踏まえて考える今回のニュース。
・約3000社から確定給付型年金の運用を委託される第一生命で
・企業の拠出する掛け金の計算等に使用される「予定利率 1.25%」が
・2021年10月からの運用開始分から0.25%に引き下げられる予定
したがって、予定利率引き下げの影響を受けるのは…
2021年10月以降に
・すでに運用を委託している企業
・新規で第一生命に運用を委託する企業
・このような企業の被雇用者の方
となります。
みんなの企業年金額が下がるわけではない
…ようですが、今後の企業年金のあり方を考えると「確定給付型」の先行きは明るくないように思います。
所感:このニュースに思うこと
今回のニュースは今後の社会にどのように影響してくるのか?考えてみました。
・他の保険会社の追随
第一生命が予定利率の引き下げに舵を切ったことが他の生命保険会社にも波及する可能性があります。
また、時代は既にDC時代と考えます。
他にあまた商品を抱える保険会社も、尻すぼみの商品の予定利率を減らし、他の商品に注力する姿勢なのでは、と。
・確定給付型年金を採用する企業への影響
第一生命との委託契約を結んでいる約3000社と同じように規約型企業年金の形態を取る企業への影響が広がる可能性があります。
掛け金は全額損金算入されるとはいえ、引き下げられた予定利率補填や従業員への給付額を引き下げる可能性もあります。
一方で、確定給付併用の確定拠出年金では掛け金上限を引き上げる動きも出ているよう。
【日本経済新聞】確定給付併用の確定拠出年金、掛け金上限5.5万円に上げ
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO65967400X01C20A1MM8000/
・企業年金制度の曲がり角・DB→DC化
DBは依然国内企業の年金制度として最も多い年金形態のようですが、DB×DCのハイブリッド型やDC単体など企業と加入者で年金の運用リスクを分け合う形の制度設計が進んでいます。
企業としての年金制度自体も減少しているとの調査もあり、ますます個人責任の時代になりますね。
・個人の資産形成知識
「守ってくれない会社」化をより強く認識させられるニュースでした。
将来的な公的年金の給付額に不安がある今、不足額を私的年金での補填や自助努力による資産形成に目を向ける人が更に増えるでしょう。
DC導入時の一時的な教育にとどまらず、運用知識の取得を継続的に促す姿勢が企業側にも必要ですね。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
誰かのお役に立てると幸いです。
【参考】
企業年金の先行きは縮小か、普及・拡大か -大和総研・2015-