
こんにちは。こあべです。
令和5年度税制改正が話題ですね。この時期はいつも税制でわくわく。
NISAの抜本改革やインボイス制度、防衛費増額関連など、話題に事欠かない今年です。
koabe-cycle.hatenablog.com
今回は、その影に隠れがちな注目株、贈与・相続税制についてメモ。
今回の改正内容、今後の動向や如何に・・・??
今日のメニュー!
1.【実質増税】生前贈与の3年内加算の期間変更(3年→7年)
現行:3年内加算(遺贈者が亡くなる3年前までの贈与額を加算して相続税に課税)
→「7年」内加算に期間延長(実質的な増税)
生前贈与加算対象者(相続人と受遺者)に対する節税効果が7年を超えないと発生しなくなる点、現行の制度と比較してもデメリットを感じることが増えそうです。
なお、2024年1月1日以降の生前贈与から新ルールが適用されるため、意識するのは2027年からでOK。
「孫」に対しての生前贈与加算は引き続き適用範囲外となるのため節税効果が維持されます。
→孫に対する遺言による相続が行われる場合は年内加算の対象
tomorrowstax.com
そして本件についての大綱本文カッコ書きについて…
相続又は遺贈により財産を取得した者が、当該相続の開始前7年以内(現行:3年以内)に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合には、当該贈与により取得した財産の価額 (当該財産のうち当該相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、当該財産の価額の合計額から100万円を控除した残額) を相続税の課税価格に加算することとする。
この点、難解。動画の内容を参考にさせていただきました。
【相続・贈与一体化】令和5年税制改正大綱・速報解説【7年内加算と相続時精算課税の基礎控除新設!】 - YouTube
2.【新設】相続時生産課税制度の基礎控除(年間110万円)
相続時精算課税制度とは:
制度を利用するには暦年課税制度からの変更申請が必要。
2500万円までの一旦の非課税を認めるが、遺贈者の死亡後2500万円を繰り入れた相続資産に対して相続税を課税する
税制上有利になる条件:
相続税の基礎控除(3000万円)以下の資産額で、年間110万円以上を贈与するとき
→贈与額を相続税対象資産に戻しても基礎控除内で収まるため相続税が課税されない
ただし、自動継続取消不可の性質により、一度精算制度を適用すると、2500万円以内の少額贈与についても申告しなければいけなかった…
これが基礎控除の新設により、「110万円までは非課税にするし申告もしなくて良い」となるので長い少額贈与に対しては効果を発揮する
贈与の豆知識
ここまでで見てきたとおり、贈与税の課税2通りの方式があります。
1. 暦年課税制度
2. 相続時精算課税制度
遺贈者からの贈与を受ける場合、どちらが節税効果をより発揮するか、制度のメリット・デメリットを把握した上で判断する必要があります。
※相続税の基礎控除の計算式
単一の基礎控除を相続人・受遺者同士で分け合う場合:3000万円+600×法定相続人数
kaikeizine.jp
3.教育資金と結婚・子育て資金の贈与税の非課税措置の延長・厳格化
教育資金、結婚・子育て資金の贈与税の非課税期間が延長されました。
贈与税の非課税措置 |
改正前 |
改正後 |
教育資金 |
2023年3月31日まで
|
2025年3月31日まで |
結婚・子育て資金 |
2026年3月31日まで |
※2023年4月1日以降に取得する信託受益権等の相続税・贈与税に適用
【厳格化1】富裕層の教育資金の使い残しは23歳未満でも相続税がかかる
贈与者が死亡した時点での教育資金の使い残しに対して相続税が課税されます。
ただし、受贈者が
「23歳未満である」
「学校等に在学中」
「教育訓練給付金が受けられる教育訓練を受講中」
いずれかであれば対象外。
ただし、「贈与者の死亡時に相続税の課税価格が5億円を超える」場合は上のいずれかの条件に当てはまっても教育資金の使い残しがあれば相続税がかかる内容に改正されました。
【厳格化2】使い残しにかかる贈与税率が高くなる
贈与者が生きているときに贈与されたお金を使い残しても贈与税がかかります。
贈与金を「使い残し」と判断されるのは…
教育資金:受贈者が30歳になったとき
結婚・子育て資金:受贈者が50歳になったとき
贈与者は直系尊属、受贈者は直系卑属のため、特例税率が適用されていましたが、今回の改正で一般税率に変更。贈与税率は改正前よりも高くなります。
今後の動き:贈与税・相続税一体化が加速?
海外税制に倣って贈与税と相続税の垣根を徐々になくし、世代間で移転する財産に対して相続税を課税する、という仕組みへの移行が進みそうです。
「徐々に」この仕組みを導入するための緩衝対応として、今回紹介した変更が2024年1月1日以降に贈与された資産に対して反映されます。
まとめ
2024年からの贈与を活用した節税戦略につながるお話でした。
・血縁者には精算課税制度でコツコツ
・孫、子供の配偶者などには暦年課税で節税効果大きく
・贈与記録は明確に残しておく
これが今回の改正を踏まえた節税と両立できる贈与方法のように思います。
将来のもしもに向けて親子で話し合う時間を重ねていけたらと思います。
また、今回の税制改正では相続面での「世代間の富の移転」を足がかりに、NISA改正で「休眠資産を市場に流す」という国の思惑をどことなく感じます。
そして毎回感じるのが「税制を知ることで免れられる課税の網」という感覚。
税制知識と節税の両立は、日本国民コストを抑制するための重要な両輪と見て間違いないと考えますが、どうでしょうか。
一方で「海外にならって日本も相続財産に一体化課税をしよう」という短絡的な考え方で推し進める課税強化は担税力の低い世帯の生活に必要な資金を圧迫することになりかねないとも感じます。
単なる課税強化=国民いじめで終わらないよう祈るばかりです。
今回も、どなたかの「そうだったのか!」のお役に立てていれば幸いです。
参考情報
youtube.com
2023年度税制改正大綱を解説 相続時精算課税に年110万円の控除を新設 生前贈与の持ち戻し期間が7年に延長へ | 相続会議
生前贈与は7年が相続税の対象へ! 令和5年(2023年)税制改正速報 | 税理士法人トゥモローズ | 東京の相続税申告・相続専門の税理士法人
【2023年度税制改正2】相続税・贈与税の一体化で生前贈与が激変! | KaikeiZine|“会計人”のための税金・会計専門メディア
